鼻と耳の関係(大人と子どもの違い)
外から見ると鼻と耳はそれぞれ独立している器官に見えますが、実は奥で管でつながっています。
耳の穴を覗くと一番奥に鼓膜(こまく)が見えますが、鼓膜の向こう側には中耳腔(ちゅうじくう=鼓室)と呼ばれる部屋があり、この部屋と鼻腔(びくう=鼻の中)の奥の方は、耳管(じかん)と呼ばれる細い管でつながっています。そして、耳管を空気が行ったり来たりすることで、中耳腔の圧と外気圧が同じになるように調整されています。
飛行機が着陸する時や高速のエレベーターに乗った時などに、耳閉感(じへいかん=耳が塞(ふさ)がったような感じ)を感じた経験はどなたでもあるでしょうが、これは、中耳腔の圧が外気圧の変化についていけなくて圧力差が生じるために起こる現象です。
耳閉感を感じた時、つばを飲み込むと治るのは、耳管が開いて空気の出入りがしやすくなり、中耳腔の圧と外気圧とが等しくなるからです。
そして、子どもの耳管は、大人と比べて太く短く、傾きも水平に近いのが特徴です(下図参照)。
風邪をひくとよく中耳炎になるお子さんがいらっしゃいますが、これは、太く短く、傾きが水平に近い子どもの耳管の構造上、鼻の中で増殖したウイルスや細菌が中耳に入りやすいことから起こる結果です。親御さんが気づかず治ってしまう場合もあり、1歳までに誰でも一度は中耳炎にかかっていると言われています。中には、小学校に入るまでは風邪をひくたびに中耳炎になるというお子さんもいるほどです。
しかし、10歳を過ぎるとあまり中耳炎にならなくなります。これは、太く短く、水平に近い傾きだった耳管が、大人と同じように伸びて細くなり傾きも出てきたので、風邪の病原菌が中耳腔に入りにくくなったからなのです。
このように、子どもが風邪をひいた時は、鼻や喉(のど)だけでなく耳の病気にも注意が必要です。風邪をひいたお子さんがいつもよりグズる、手を頻繁に耳に持っていく――という状態が見られる場合は、ぜひ、耳鼻科を受診してください。